会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2023/11/09
月の途中で時給を変更したときの月額変更の変動月の考え方

10月に最低賃金を下回るパートタイマーの時給を引き上げたが、今回は最低賃金の引き上げ幅が大きいこともあり、給与締切日ではなく、発効日に合わせて変更した。その時の月額変更の考え方について気になった木戸部長は、社労士に確認することとした。


 当社では最低賃金の引上げに伴い、最低賃金を下回るパートさんの時給を引き上げました。

 今回の引上げ幅は、かなり大きかったので、人件費負担も増えたのではないでしょうか。

 はい。さまざまな物価の値上げもあり、従業員の生活もたいへんだろうと想像はしたのですが、当社としても経費の負担が大きくなっていたので、パートさんには申し訳ないと思いつつ、給与締切日の途中で時給を引き上げることにしました。

 そこで、月額変更(随時改定)のことで確認しておきたいのですが、よろしいでしょうか。

 どのようなことでしょうか。

 10月に支給した給与は、ざっくりとお伝えすると、前半は最低賃金引上げ前の時給、後半は最低賃金引上げ後の時給で計算した額になっています。

 なるほど。給与計算にかなり手間がかかったのではないですか?

 そうなのです。そこで、月額変更のことがふと気になりました。月額変更は、給与の変動月から3ヶ月間に支給した給与を平均して考えることになるかと思いますが、今回も同じように10月〜12月に支給する給与で考えればよいのでしょうか?

 10月支給分の給与が低額になっていることを気にされているのですね。お考えのとおり、低額の賃金が混ざることになりますので、標準報酬月額としては満額になりません。そのため、今回は、最低賃金引上げ後の時給で満額計算される11月〜1月に支給する給与で考えることになります。

 そうでしたか、確認してよかったです。

 日本年金機構では、「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」(以下、「事例集」という)を公開しており、この中に「昇給・降給した給与が実績として1か月分確保された月を固定的賃金変動が報酬に反映された月として扱い、それ以後3か月間に受けた報酬を計算の基礎として随時改定の判断を行う。」と示されています。今回の場合、10月分の給与は、引上げ前の時給が入っているため、10月は変動月とは扱わず、11月を変動月として扱うことになります。

 承知しました。1月の給与支給額が確定した後に確認するようにします。

 よろしくお願いいたします。

 そう考えると、他の手当も給与計算の途中で変更になるものもあったような気がする・・・。

 そうですね。住宅手当や通勤手当がそうだったように思います。これまで意識していませんでしたが、今後はしっかりと確認するようにします。

 そうですね、よろしくお願いいたします。ただ、個別に確認することは手間も発生しますので、もしかしたら、給与締切日に合わせた支給方法に見直すという対応も選択肢として考えてよいかもしれません。

 確かに。一度、その考え方での対応も検討してみます。

>>次回に続く



 ガソリン高騰に伴い、自家用車通勤を認めている企業では、通勤手当として支給しているガソリンの単価を毎月見直しているケースもあるかと思います。事例集ではこのようなケースへの対応も、以下の通り示しています。

[問]自動車通勤者に対してガソリン単価を設定して通勤手当を算定している事業所において、ガソリン単価の見直しが月単位で行われ、その結果、毎月ガソリン単価を変更し通勤手当を支給している場合、固定的賃金の変動に該当するか。
[答] 単価の変動が月ごとに生じる場合でも、固定的賃金の変動として取扱うこととなる。

 月額変更の確認漏れがないように、適切に管理をしていく必要があります。

■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
日本年金機構「随時改定(月額変更届)

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。